2014年9月30日前立腺がんに相次ぎ新薬
~ ホルモン療法後に活用 広がる治療選択肢 ~
前立腺がんは食の欧米化や高齢化などにより、日本人男性の患者数は1975年から2010年までに約27倍に急増している。また、前立腺がんで毎年1万人以上が亡くなっており、2020年には胃がんを抜いて男性のがんで最多になると予想されている。
前立腺がんの発症や病状の進行には、男性ホルモンが関与していることが知られており、前立腺がんの転移や再発例では男性ホルモンを抑える治療(ホルモン療法)が行われている。また、症状が進み、ホルモン療法が効かなくなった患者に対する内科的治療法は、抗がん剤であるドセタキセル(商品名:タキソテール)しか選択肢がなかった。
2014年に入り、前立腺がんに対する新たな治療薬が3種類、相次いで登場している。今年に入って発売されたのは、ホルモン製剤のエンザルタミド(製造販売:アステラス製薬株式会社 商品名:イクスタンジ)とアビラテロン酢酸エステル(製造販売:ヤンセンファーマ株式会社商品名:ザイティガ)、抗がん剤のカバジタキセル(製造販売:サノフィ株式会社 商品名:ジェブタナ)。いずれも、従来のホルモン療法では効果が得られない「去勢抵抗性前立腺がん」に効果があるとして国の承認を得た。
ホルモン療法の効果がなくなるのは、精巣以外に副腎やがん細胞自身から男性ホルモンが産生されていることが原因の1つと考えられている。この新ホルモン製剤は、男性ホルモンががん細胞で作られるのを防ぎ、かつ細胞核に取り込まれるのを妨げることで、がん細胞の増殖を抑制する。また、新抗がん剤のカバジタキセルは、がん細胞内のたんぱく質と結びつき、がん細胞が分裂して増えることを妨げる。ドセタキセルの副作用である手足のしびれなどの副作用は少ない一方で、赤血球や白血球数などが減少するケースが報告されている。
これらの新薬も健康保険は適応されるが、3週間に1回投与するカバジタキセルの薬価は約60万円、2種類のホルモン製剤も1カ月分が40万円前後するなど、長期間治療し続けると医療費も高額になる。また、新ホルモン製剤が効かなくなるケースも考えられ、新抗がん剤と組み合わせた場合の効果についてのデータも少ない。適切な時期に治療薬を切り替えることが重要であり、どのタイミングで薬を切り替えるかは今後の課題である。