膵臓がんに対する新たなワクチン療法は期待できる

免疫療法

希望を持てる、膵臓がんワクチン療法に関するPhase1臨床治験の結果が、著名学術誌に発表されました。

KRAS遺伝子変異をもとに作製された、ペプチドと核酸アジュバントを使ったワクチンです。驚くべき腫瘍縮小効果を示しています。

今後、患者数を増やした治験へと進んでいくはずです。

個人的に注目している点は、エピトープスプレディングと呼ばれる、標的抗原の多様性が発生し、ワクチンに用いるKRASペプチド変異以外の幅広い腫瘍抗原を標的とするT細胞が出現しているところです。

膵臓がん細胞の自然進化にも対応できる体へと体質を変化させることが可能なワクチンかもしれません。

またこの基本メカニズムは、当クリニックグループの樹状細胞ワクチンと大変近く、我々も、樹状細胞ワクチンへの自信を新たにいたしまた。

膵臓がん・大腸がんはしばしばKRAS変異を有し、腫瘍遺伝子or蛋白質が治療後持続または再発すると難治性となります。

がんワクチンELI-002 2Pは、amphiphile(Amph)修飾されたG12DおよびG12R変異KRAS(mKRAS)ペプチド(Amph-Peptides-2P)とアジュバントとしてCpGオリゴヌクレオチド(Amph-CpG-7909)を使用し、リンパ節へのデリバリーと免疫応答を向上させます。

今回、局所治療後、最小残存mKRAS疾患(ctDNAおよび/または血清腫瘍抗原陽性)を認めた25人の患者(20人が膵臓がん、5人が大腸がん)を対象に、定用量Amph-Peptides-2Pとドーズup形式用量のAmph-CpG-7909を使用したフェーズ1試験を行いました。

登録は完了し患者のフォローアップが続いています。

主要評価項目は安全性と推奨フェーズ2用量(RP2D)が含まれ、二次評価項目は腫瘍バイオマーカー(長期的ctDNAまたは腫瘍抗原)、探索的評価項目は免疫原性と無再発生存期間(RFS)が含まれています。

投与制限有害事象は観察されず、RP2Dは10.0 mgのAmph-CpG-7909でした。
mKRAS特異的T細胞応答は25人中21人(84%;CD4+およびCD8+の両方が59%)で観察され、25人中21人(84%)、6人中6人(24%;3人が膵臓癌、3人が大腸癌)でバイオマーカーの改善が観察され、中央RFSは16.33ヶ月でした。

有効性は著名なT細胞応答があるかと相関しており、腫瘍バイオマーカー減少率は−76.0%対−10.2%(P<0.0014)、中央RFSは未達成対4.01ヶ月(ハザード比=0.14;P=0.0167)でした。

ELI-002 2Pは、免疫療法耐性のあるKRAS変異腫瘍の患者で安全で、著明なT細胞応答を誘導しました。

『Lymph-node-targeted, mKRAS-specific amphiphile vaccine in pancreatic and colorectal cancer: the phase 1』Nature Medicine 09 January 2024

プレシジョンクリニック名古屋院長
岡崎監修